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2025年株主提案概要(2025年5月30日現在)

・法的にはまだ招集通知発送期限はあるものの2025年6月株主総会の株主提案がほぼほぼ出揃いましたので、本年の傾向を分析してみました。

・2025年は確認できたものだけで既に株主提案が133件あり、昨年の115件を6月の段階で既に超過しています。

・6月総会に限ると、昨年の84件から118件に増加しています。

・提案株主はアクティビストが59件でトップで全体の44%を占めており、続いて個人株主、市民団体と続いています。

・時価総額で見てみると5000億円未満の企業数が多いですが、上場企業数からの比率で見ると1兆円以上の企業の11%が株主提案を受けています。

・提案の中身ですが、剰余金の配当を求める提案が件数トップで、自社株買い提案が続きます。取締役選任を求める提案が増加しており、株式報酬の新設や増額により株主との利害一致を求める提案も増加しています。

・各社取締役会の株主提案に対しての賛否は1件を除いてすべて反対でした。

・PER、PBRで見ると、当然のことですが、株価が割安な企業が株主提案を受けていて、自己資本比率が高い企業が株主提案を多く受けています。

・東証は株主提案が投資家に影響を与える情報として適時開示を行うことを推奨していますが、依然として電力会社や民営化企業を中心に適時開示しない企業があるため、招集通知で確認せざるを得ず、完全に正確な統計ではありませんので、念のため。

2025年株主提案の傾向

2024年、2025年の株主提案件数と提案株主

株主提案を行ったアクティビスト

・ニッポンアクティブバリューファンドが12件のトップで昨年から大幅に提案件数を増加させています。ダルトンの10件が続きます。

・ただ、両ファンドは兄弟ファンドで共同投資も多いため、実質両者連合で全体の約4割を占めています。また本年もストラテジックキャピタルが7件の提案を行っています。

・こうして見ると、株主提案を行うアクティビストは毎年継続的に行っており、一つの重要な対企業戦略となっていることがわかります。

提案された議題

・剰余金配当を求める提案がやはりトップで、自社株買いを求める提案が続きます。

・取締役選任を求める提案も増加しており、ダルトン(ニッポンアクティブバリューファンドが提出)によるフジメディアHDに対する提案が注目を集めています。25件中12件がアクティビストによる提案でした。

・取締役と株主の利害を一致させる目的の株式報酬の新設・増額の提案や、取締役の過半を社外取締役へという提案も大幅に増加しています。

・2024年には一定程度あった政策保有株式売却や買収防衛策廃止といった提案は、前者がおそらく削減が進んだため、後者は有事の防衛策の有効性が立証されたことで廃止が進んでいることから、減少しています。

・その他で注目される株主提案は、日本航空によるAGPに対しての株式併合提案です。合計75%を保有するJAL、ANA、日本空港ビルデング3社が共同で上場会社のAGPに対して株式併合による非公開化を提案しました。これに関しては既に投稿しておりますのでご参考ください。

提案を受けた企業

【時価総額別】

・時価総額別で見ると、5000億未満の企業数が多いですが、実は時価総額の大きい企業の方が上場企業数比で見ると多いことがわかります。

・時価総額1兆円以上の企業では11%の企業が株主提案を受けています。

【PERとPBR】

・やはり低PER、低PBRの企業が株主提案を受けています。

【ROEと自己資本比率】

・ROEについては特に傾向は見られませんが、明らかに自己資本比率が高い企業が株主提案を受けていることがわかります。

まとめ

・2025年も活発に株主提案が行われています。

・アクティビストからの提案が非常に多いですが、中には個人株主からの提案でおふざけのような提案もありました。

・現在の保有比率1%以上か300単位以上という株主提案の資格をあまりに緩いと見直そうという動きもあります。

・1件を除き他すべての株主提案は企業の取締役会から反対されていますが、唯一一部賛成を受けたのは、ダルトンが行った栄研化学に対しての取締役選任議案です。

・栄研化学はダルトンの提案する6名の取締役候補のうち2名を会社提案とすることに合意しました。

・今後も株主提案の動きは続きそうです。

以上